妖弧の燿子さん

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妖弧の燿子さん

「…………んんん?」  とある休日、ケガも完治しすっかり並の日常生活に戻っていた辰郎は、出掛けるために訪れた駅のホームで、目を丸くしていた。  彼の視線を追ってみると……。 (あれ……耳?)  そう、耳なのだ。これは決してフェチだとかそういう話ではない。頭から、獣的な耳が生えている人物を目撃していた。  生物学的な観点から考えるに、およそ人間では存在し得ない。その形状といい、モフモフ感といい、明らかに獣のそれであった。  人が多く、顔は見えない。  だが、明らかに人波から飛び出した二本の耳に、辰郎はフリーズしていた。  お出かけなんてしてる場合ではない。  辰郎の興味は、もはや耳にしかなかった。  彼の足と視線は、自然とその耳を追いかけるのだった。  ……もう一度説明しておくが、決してフェチの話ではない。
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