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「その顔はまた落ちたのね」
リュウスケからの連絡がなかったことに妹のトモミが心配し、公園まで様子を確認しに来ていた。
「でも私立に行くんでしょ?」
トモミの言葉に、リュウスケの心が動いた。国立大学しか認めないと言っていた父が、滑りどめに私立を勧めていた。もちろん、リュウスケは私立など考えてもいなかった。しかし、今となってはその私立がリュウスケを救ってくれるように思えた。
「許してくれるかな?」
「大丈夫じゃないの? 弁護士になれないわけじゃないし」
トモミと並んで歩くのは随分と久しぶりに思えた。頭1つ背丈が違っていたはずなのに、いつの間にかほとんど目線の高さが変わらなくなっていた。トモミは勉強よりもテニスに夢中だったから、まだ3月なのに顔や首は小麦色に焼けていた。
「どうしてフーゾクで働くんだと思う?」
「さぁ、考えたこともないから分からないよ。お兄ちゃんの方が詳しいじゃないの?」
なぜ、自分の方が詳しいと思われたのかリュウスケには分からない。トモミはそれ以上この話題を続けたくなさそうだったから、リュウスケも話すのをやめた。
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