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「沙月、明日空いてる?」
仕事を終えて電話をかける。かける時間はいつも夜9時半頃。
特に決めたことわけではないけれど、なんとなくお互いの生活リズムに組み込まれている。
平日はかけないことも多いが、なんで電話してくれなかったの?と言われることもない。
「あ、明日、私映画行ってくる。夕方だったらいいよ」
「だったら、そっちに5時頃行っていい?」
「大したもの出せないけれど、それでいいなら……」
「だったら、この間作ってくれたオムライスは?」
何気ない会話は続いていく。
映画が好きな沙月は、泣ける映画だと一人で見たいらしい。
それまでは何もかも恋人同士は同じように、という枠組みで付き合っていた分、はじめの頃はさみしくもあったが、今では慣れた。
それに、今はこの距離感が楽で、沙月の家に毎日いても平気だとさえ思ってしまう。
付き合って2年、この先も一緒にと考えることも増えた。
店のマスターにもいつ結婚するんだ、なんて言われて、ぼんやりと俺の中で浮かんでいる日がある。
さて、来月は彼女の誕生日。
どんなサプライズをして喜んでもらおうか。
それよりも先にバレないようにするのが、第一目標だな。
部屋に飾られた二人の写真を見て、俺は思わず呟いた。
(おしまい)
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