初めて知った“恋”は“失恋”で。

2/14
前へ
/14ページ
次へ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 教員が手にしたチョークが黒板を小気味良く滑ると、 生徒たちがノートに何事かを書き記す。 そんな生徒たちの中で一人。黒髪の女子生徒だけは、 皆と同じ様に黒板を見詰めるでも無く、またノートを取るでも無い。 彼女は、一人の男子生徒の後ろ姿をじっと見詰めるばかりだ。 ふと。私は自分が広げたノートへと視線を落とす。 其処には殆ど何も書かれていないノートが、私を見ている。 不味い。私はノートも取らずに、 また彼の後ろ姿をずっと眺めていたらしい。 私は慌てて、黒板に書かれた文字が消える前に ノートへ書き写そうとする、が。 「(あぁー!待って~!行かないでー!)」 遅かった。黒板に書かれた文字や図形たちは、 先生が振るった無慈悲な一振りにより、皆その姿を消してしまう。 書き写せたのはほんの少しだけで。私はそれを見詰め。 「(うん、何とかなる。と思う。思いたい…。)」 素晴らしく半端な出来のノートに、“はぁ。”と 溜息が一つ零れ出てしまう。最近はこんな事がやたらと多い。 その原因は分かっている。 「(間違いなく彼の所為。)」 私は少しだけ恨めしく。彼の背を見詰めた。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加