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彼と話すべきだと漠然と思い。
私は学校で彼に話し掛けるチャンスを伺う。
彼を遠巻きに見詰め。いざ話し掛けようと思っても。
「(せ、席を立てないッ…!)」
話し掛けに行こうとする度に、足は重りが付いた様に重く。
目の奥からはじんわりと熱が広がる感覚が押し寄せ、
顔が熱くなってしまう。それらを必死に鎮めている内に、
チャンスは何処かへと消えてしまう。
「…(おかしい。症状が悪化している気がする。)」
そんな情けない事を毎日続けている内に。
いつしか私は彼を眺めているだけで、
彼の声を聴くだけで心がざわつく思いを感じるように。
それは心を掻き乱す様な不快感は無くて、
どちらかと言えば心地良いざわめき。
勿論私は彼に声を掛けようと努力した。したよ…。
だけど、どうにも彼に話し掛けられず。
タイミングを図ろうと彼を観察する日々。
そんな日々が続き。私は出欠の時に彼の声を聞こる事に。
彼を見ていられる日々に、
何処か満たされた何かを覚えてしまっていた。
観察しては満足してしまい。
話し掛けられずに時間だけが流れに流れ───
「“で”。まだモヤモヤの理由は未だに分かってない訳?」
「う、うん…。」
何時ものようにお昼を囲む彼女は、
お礼の半分として、私に悩みの経過報告を求めて来た。
経過報告を聞いた彼女は、
やれやれと言った具合の表情を浮かべ。
「人の事は言えないけど。
そう言うのは早い方が良いのよ。」
「…うん。」
彼女に言われる前から、勇気を出さなくてはと
思っていた。勇気を。勇気を出そう。
「よし、明日!明日こそ彼と話してみるよ!」
「決意するのは良いけど…。
その台詞はやめなさい。」
「?」
何故か彼女はお昼が終わるまで、ずっと呆れ顔だった。
気にはなったけれど、それよりも私は、
明日の事で既に頭がいっぱいだ。
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