世界で一番下手な嘘

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スカウトをされたのは、約1週間前のこと。 私はときどき、知り合いのバーで歌をうたっている。 歌は好きだし、何より、聞いてくれたお客さんの笑顔を見るのが嬉しいから。 そこで、スーツを着こなした男性に声をかけられた。 その人は、私を東京で育てたいと言ってくれた。 無料でレッスンが受けられるらしい。 『めっちゃすごいやんレナ!』 ナオキは、私以上にそのことを喜んでくれた。 でも……。 『迷ってんねん』 『えっ!? なんで!?』 『なんていうか……歌は好きやけど、プロになろうと思ってたわけじゃないから』 あくまで趣味で歌っていただけで、私程度の歌唱力の人はいくらでもいる。 こんな私が、プロの世界で通用するわけがない。
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