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――1年後。
「やっとこの日が来たね、レナ」
私の隣にいる、スカウトをしてくれた佐伯さんが言った。
「大袈裟ですよ。まだ小さな会場だし」
「それでもワンマンライブだからね。楽しんでおいで」
「はい!」
暗い舞台裏から、スポットライトの当たる舞台に歩を進める。
もし、お客さんがほとんどいなかったらどうしよう。
私はおそるおそる客席を見た。
会場全体から拍手がおこり、立ち見の人までいる。
……ナオキ。
この景色を見せてくれた人の名前を、心の中で呼ぶ。
「この歌は、ある人のことを思って書いた曲です」
私は目の前のマイクに向かって言った。
「その人は、私の歌を一番褒めてくれる人でした。今は離れているけど、きっと、いつかこの歌が届くと信じています。それでは、聞いてください。『離れていても』」
私は声に、ギターを弾く手に、思いを込めた。
『君に会いたい
夢を叶えた
その先でいいから――』
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