機械街の少年

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 裏道には今日も「不良品」が山のように積み上げられていた。彼らは工場で働く従業員だった。少年と違って、寝ることもなければ疲れることもない。だが、鉄鋼を削り続ければ消えて無くなるように、彼らにも終わりがあるのだ。終わりが来た不良品は、「良い不良品」と違って二度と動くことはない。  ただの「不良品」は特別な部屋に運び込まれる。一度だけその様子を見たことがある。部屋から出てきた彼らは、身体のあちこちがばらばらにされて、元の形を止(とど)めていなかった。  少年は屈みこんで、彼らの残骸を漁った。まだバラバラになっていない。そうなる前に、亡骸から使えそうなものを頂いて寝床に持ち帰る。それが少年の日課だった。 「今日は大収穫だ」と独り言をつぶやいた。  手に持ちきれないため、ボロボロの服の裾を籠のようにして、手に入れた部品を抱えた。  路地裏をさらに進むと、コンクリート造りの四角い小屋が見えてくる。そこが少年の寝床だ。 扉の前に立つと自然に開くように出来ている。仕事場の長が「不出来な人間には、こういうのが便利じゃろ」と好意で作ってくれたのだ。両手の塞がった少年は、この場にいない工場長にぺこりとお辞儀をした。  荷物を抱え直して、四角い部屋の隅へと向かう。そこには、不良品の形見とも呼べる部品の数々が乱雑な山を作り上げていた。その山に新しく部品を追加する。金属同士がぶつかって、がちゃがちゃと騒がしい音を立てた。  少年はその場に腰を下ろし、山の隣にたたずむ「人間」に正対した。     
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