機械街の少年

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胴板をつぎはぎに溶接した胴体と四肢。針金と糸を組み合わせた手指。鉄板の足。鉄球の頭。試に肘や肩を動かしてみると、赤色や青色のコードがちらほら覗いた。どこからどうみても人間だ。少年は惚れ惚れと眺めた。  周りの人間を良く観察して、ようやくここまで近づけることが出来たのだ。背丈も少年と同じになるように設計されている。裏道で部品を集めているのも、このためだった。  しかも、これはただの人間ではない。少年にとって特別な意味を持つ存在だ。それだけに、丁寧に、慎重に組み立てなければいけない。残るは目と口、そして神経だ。  少年は持って帰った部品を鑑定し、使えそうなものを人間に取り付けていく。コイルを埋めて、ねじを回して。壊れかけのガラスを手入れするように少年の手が震える。丁寧に。丁寧に。ついに鉄球に豆電球が付けられ、見事な両目が出来上がった。  ある程度進めてから、少年は布団の上にばたりと寝転がった。綿の少ない布団の上でごろごろと転がる。視界が泡を見ているかのようにぼやけ始める。ずぶずぶとオイルの海に沈んでいくような感覚だ。  そうだ、まだ挨拶をしていない。眠る前にやることを思い出して、とろける瞼を持ち上げた。視界に造りかけの人間を映す。 少年は疲労で重くなった手を持ち上げて、 「バイバイ、ぼくの〝友達〟」  そう言って瞼を下ろし、またオイルの海へと沈んでいった。  次に浮かび上がるのは、何時間後か……。
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