機械街の少年

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 少年の仕事場は街の西側の壁際にあった。  壁にべったりと寄り添うその工場には、不思議なパイプが通っている。そのパイプは壁の方から伸びていて、工場の端から端まで続いている。最後は下向きに緩やかなカーブを描いて、地面の中へと潜っていた。  パイプの上部は途中で半円柱様に切り抜かれていて、そこで中が丸見えになる。パイプの中では長いベルトコンベアが地面と水平に流れており、その上でたくさんの食糧が流れていた。従業員は食料が傷んでいないか、不審物が紛れていないかを確認する。それがこの工場での仕事だった。  一目で傷んでいると分かる食料がほとんどだが、そうでないものもいくつかある。例えば、袋詰めの食糧。袋を開けてみるわけにもいかない。そんなときは、工場にある大きなスクリーンに映された八桁の数字を見る。この日は「2983,11,29」とある。袋の裏にも同じく八桁の数字があり、それがスクリーンの数字より大きければ、品質に問題はないと判断する。  うぃん、うぃん、という複雑な音を聞きながら、少年は食べ物を選別していった。 「五〇番さん」少年は隣に立つ同僚に話しかけた。「この緑のものは大丈夫なのかな。腐ってない?」     
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