機械街の少年

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 五〇番さんはぎぎぎと首を少年の方に向け、手に持たれた食べ物を見た。 「あぁ、コレは〝キャベツ〟というんだ」 「キャベツ?」 「うん。元々緑色なんダ。確か、人参と同じ野菜のハズ」 「へぇ……」少年は感心して唸り声を上げた。五〇番さんは博識だ。 「ときどき、〝レタス〝って野菜と見分けがつかなくナル。野菜って奥が深いネ」  などと話していると、パイプの向かい側に立つ二八番さんが怒鳴った。 「コラ! 私語は慎め! 仕事中ダ!」  ふたりは「はーい」と魔の抜けた返事をし、黙々と作業を再開した。  刻一刻と時間が過ぎる。ベルトコンベアが時間も一緒に運んでいるようだ。時間の上に、別の時間が乗っている。終わってしまっている時間。まだまだ余裕のある時間。  少年は終わってしまった時間を手に取り、足元の籠に入れる。籠はその場を動かない。時間が止まっているから。しかし、ひとたび少年が持ち上げれば、また時間が動き出す。  ぐぅっと、少年はのどの奥から深く軽い音が鳴るのを感じた。来てしまった。  少年はちょんちょんと五〇番さんの肩を叩いた。 「ごめん、ちょっと……」  五〇番さんは慣れたように言った。 「うん、いつものだネ。大丈夫。ちょっとくらい抜けても、作業が滞るわけじゃないカラ」     
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