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「ありがとう」少年は足元の籠を持ちあげる。
「その身体も大変だネ。それなのに頑張ってるキミは偉いヨ」
そう言われると、何だか照れくさくなってしまう。少年はぺこりとお辞儀をして、そそくさとその場を抜け出した。
工場には休憩室が用意されている。いくら働き続けられる人間だからと言って、不調がないわけではない。腕が急に動かなくなったり、片目が光らなくなったり。そんなときは休憩する。しばらく休むと元通りになって、また働けるようになるのだ。
少年が休憩室に入ると、まばらに従業員が休んでいるのが目に入った。白橙色の明かりに照らされて、胴体が鈍く光っている。ひとりが腕にオイルを差していた。働きすぎたのかな。
休憩室を掃除していた七七番さんが愛想よく少年に声を掛けた。
「アラ、いらっしゃい。ゆっくりして行ってね」
ありがとう、と少年は言い、鉄の椅子に腰かけた。隣に籠を置くと、籠の中の袋が擦れてがさがさと音を立てた。
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