機械街の少年

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 袋に詰められた食べ物は痛んでいないことが多い。特に、袋を振って「がしゃがしゃ」と音のするものは乾燥しているものがほとんどで、食べても全く問題がない。逆に液状の食べ物や缶詰などは危険だ。食べるとお腹が痛くなって、何十時間も寝床に拘束されてしまう。少年は経験的に知っていた。  ぼろぼろの服で手を拭き、袋を取り出して振ってみる。乾いた軽い音がする。少年は安心して袋を開けた。ぽりぽりと口に含む。のどが渇いたときは、コンベアからくすねた水を飲む。水は腐らない。三つほど袋を開け終えると、少年のお腹が鳴ることは無くなった。  食べた後はすぐに動けないため、しばらく休憩室でじっとしている。電球のひとつがちらちらと点滅するのを眺めていると、七七番さんがやってきた。 「ねぇ、面白いハナシがあるンだけど、聞いて行かない?」  七七番さんはおしゃべりだ。断る理由はないため、少年はこくりと頷いた。 「この前、六九八番ちゃんから聞いたンだけどね。この街の地面の奥に、別の街が存在するンだって」 「地面?」 「地底都市だってさ。この工場のパイプは地面にまで伸びてるでしょう? その先に大きな街があるの。  ためしに地下の階段を下りて、六九八番ちゃんがパイプに耳を澄ませたら、誰かの話し声が聞こえたみたいよ」 「それって、上で働いている人の声じゃない?」  パイプの中は、コンベアがある以外は空洞だから、話し声が響いて聞こえただけのように思える。しかし、七七番さんは忙しなく手を動かして否定した。     
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