機械街の少年

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「違うわよぉ。聞いたことない言葉で話してたって言ってたわ。怖いわねぇ。地下では大量の動物を飼育していて、食べ物はそれを育てるために運ばれてるなんて、もっぱらの噂じゃない。不気味ねぇ」  七七番さんの話はまだまだ続きそうだった。いつまでも休憩室にいては、五〇番さんに仕事を任せたままになってしまう。少年は「仕事に戻らないと」と一言添えて、休憩室を後にした。  少年は仕事を切り上げて家路を急いだ。五〇番さんたちはまだ働いている。眠る必要もないし、疲れもないからだ。少年の代わりは五〇番さんがやってくれる。彼のおかげで、少年は安心して眠ることが出来た。  いつものように不良品たちの部品を集めて小屋に向かう。小屋の隅の山をまた少し大きくして、少年は〝友達〟作りを再開した。  地下の秘密都市も、コンベアの行く先も、少年の心を惹くことはなかった。少年にとって重要なのは、食べ物と睡眠、そして目の前の作りかけの人間だけだ。まだ人間もどきな鉄の塊でしかない。だが、少年の見立てでは、電気を流して神経を活性化させれば完成する。赤と青のコード内をオイルが駆け巡り、自律して動くことができる。  少年は胸が躍って仕方がなかった。自分の力で〝友達〟を作れるかもしれない。そう思うだけで眠気さえ吹き飛んだ。     
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