3食目 お弁当

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我が家のお昼は基本的に母の手作り弁当である。 ふりかけごはんかおにぎりに、ウインナーやプチトマトに昨日の晩御飯の残り物を詰めたのがよくある我が家のお弁当のパターンなのだけれど………。 「差別だ………!」 「これはまた………」 お昼休み、お弁当を広げて思わず固まる私とミツ。 今日のお弁当も母が作ってくれたものなのだけれど、あまりにも内容が違いすぎて二度見してしまった。 というのも、目の前にある私の弁当はおかずが小さなウインナー二本だけで残りの面積は全部白米に小さな梅干だけのほぼ日の丸弁当で、対するミツのお弁当には豪華なおかずでご飯にはご丁寧に桜でんぷでハートが描かれていたのだ。 「ちょっと酷すぎない!?実の娘に対して!!!」 確かにミツがイケメンだと分かってから、母の態度が嘘みたいにコロッと変わったのは知っていたけどここまでだとは思わなかった。 差別だ!格差だ!と泣く私にミツは苦笑しながらも自分の弁当箱を私に渡すと、私のお弁当箱を手に取った。 「そっち食べな、こっち食べるから」 「いいよ、これミツのお弁当だし………」 「いいから、それに僕の体質知ってるでしょ」 そう言ってミツはニコリと微笑むと、いただきますと手を合わせてほぼ白米だけのお弁当を食べ始めた。すると………。 「密希くーん!よかったら私のお弁当食べない?」 「あ!ねえねえ密希君、アタシの卵焼きあげるよ!今日作った自信作なんだ!」 「行橋お前おかず少なくね!?これやるよ」 「ありがとう」 ミツがお弁当を食べ出した瞬間、主に女子中心にミツの周りに人が集まりウインナー二本だけのおかずしかなかったミツのお弁当は、あっという間に沢山のおかずやパンといった豪華なお弁当に変わったのだ。 「イケメンって得だよね………」 「何が?」 「いや、何でもない………」 若干虚しい気持ちになりながらも、私も交換したお弁当を食べ始めたらいつもよりかなり丁寧な味付けに、美味しいはずなのに胸焼けしそうな気分になった。 あ、そうだ。 今回はお弁当をテーマに怪談を書いてみよう。 そう思いつつ、私はお茶でおかずを無理やり流し込みながらスマホ片手に文字を打ち込むのだった。
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