3食目 お弁当

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これは、私が小学生の時に体験したお話になります。 2年生のある日、遠足があり私達の学年はバスで大きな公園へと向かいました。 その公園には大きなアスレチック遊具が沢山あって、先生からの注意事項を聞いてから早速私は仲の良い友達と一緒に遊具で遊び始めました。 沢山遊んで、お腹が空いた頃にタイミングよく昼食の時間となり持ってきたシートを敷いてから、お弁当を食べました。 遠足ということもあってか、いつもよりおかずが少し豪華でまたデザートも着いていたのもあり、友人達とおかずを交換しあいながらお弁当を食べていると、ふと近くの木の下に一人でポツンと地べたに直接座ってお弁当を食べている子がいるのに気づきました。 一人でお弁当を食べていたのは、隣のクラスの岩井杏子ちゃんでした。 杏子ちゃんの家は、お父さんがおらずお母さんと二人で暮らしており、いつも同じヨレヨレの服を着ているのと、本人があまり喋らないのもあってかクラスで浮いた存在になっているという噂を聞いたことがありました。 私は一人じゃ寂しいだろうなと思い、杏子ちゃんに一緒に食べない?と声をかけにいくことにしました。 杏子ちゃんに近づくと、ガリガリと何かを噛み砕く音が聞こえ杏子ちゃんと声をかけると、音はピタリと止まり杏子ちゃんが顔を上げて私を見ました。 杏子ちゃんのお弁当には、白いモノがぎっしりと詰まっており一体何を食べているの?と聞けば、杏子ちゃんは小さな声でこう答えました。 「おとうさん………」 思わず、お父さん?と聞き返すと杏子ちゃんはコクリと頷きまたガリガリと音を立てて白いモノを食べ始めました。 よく見ると、白いモノは細かったり太かったりしていて私は興味本意で、なんでお父さんを食べてるの?と聞けば、杏子ちゃんは少し困ったような顔をしながら小さな声でこう答えてくれました。 「だって、食べないとお母さんが困るから………」 そう言って、杏子ちゃんはまたガリガリと音を立てながら白いモノを食べ始め、どことなく気まずい空気が流れたので私はそのまま杏子ちゃんの側を離れました。 それから1年後、杏子ちゃんのお母さんが逮捕されたとニュースで放送されました。 逮捕の原因は殺人で、殺した相手は何と旦那………つまり杏子ちゃんのお父さんだったのです。
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