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「母は色々あったけれど、父と出会い恋をしてやがてその怪談作家の養子となり結婚をした
だけど、幸せは長くは続かなくて僕が産まれてすぐに父は亡くなり、僕が3歳の頃に母とは暮らせなくなってしまったんだ………
僕と離れる間際まで、母はこう言い聞かせてくれたんだ
怪談は私を構築した全て、そしてあなたを守り糧となる大切な物って………
言霊って知ってるかい?
簡単に言えば人の言葉には魂が宿る、何度も何度も繰り返しそう言い聞かされた僕の糧は怪談になった………
そこからの暮らしは、まぁ………あまりいい物じゃなかったけどね」
そう言って、密希君は私に近づくと私が胸に抱えていたノートを手に取りペラペラとページをめくるとこういった。
「キミの恋愛小説はつまらない
何故なら、恋愛はこうって言う固定概念にとらわれているから………だから、主人公がいくら変わってもワンパターンすぎて面白みに欠けるんだ」
なるほど………確かに私の恋愛小説って思い返せばよくある展開の物が多い気がする。
こうしてアドバイスされてみると、じゃあ次はこうしようああしようって考えられるわけであって有難いなぁ、なんて思っていると密希はだからね………と私の手を取り微笑んでこう言った。
「キミには特別に僕の食事係になってもらおうと思っているんだ」
「し、食事係………!?」
「僕の食事………これからは恋愛じゃなくて怪談を頑張って書いてね」
「え!?ちょ、待ってよ!私怪談なんて書いたこと………!」
「大丈夫、怪談っていうのは探してみると沢山ネタが転がっているから
キミの小説は確かにワンパターンだけど、構成はちゃんと成り立っているからそこに恋愛感情じゃなくて恐怖と怪異を着けたすだけさ
それに、キミは遠縁とはいえ母の食事を作ってくれた小説家の血が少なからずは流れているんだから大丈夫だよ」
これからよろしくね、なんて微笑む目の前の美少年に思わず嘘ぉ………なんて声を漏らしてしまうと、あぁそうそうと再び口を開いてこう言った。
「ボクの事はミツって呼んでくれていいよ、この呼び方で呼んでいい人は限られてるから………」
これからよろしくね、そう言って笑う美少年密希君もといミツは私の手を握りながらそう言った。
こうして、私とミツの奇妙な生活は幕を開けたのだった………。
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