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 さわさわと、かすかな音が耳に触れた。枝葉が風に揺れる、小さいがはっきりしたものだ。  夕方、部活も終わって帰宅途中のことだ。視線をめぐらせてみるが、あたりにそれらしき木は見当たらなかった。あれ、わりと近くで葉擦れがしたんだけど……  「――ああ、今年も立派に咲いたね。きれいだなぁ」  首をかしげていると、いっしょに歩いていた幼なじみが突然言った。その視線の先に、古びた朱塗りの鳥居がある。夕陽の差し込む境内では、桜がちょうど満開になっていた。  なるほど、あれか。確かになぁと納得して、素直に相づちを打った。
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