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そんな中、香澄は友達が待つカフェテリアへ到着すると、大きく手を振り合図を送る1人の女性の姿が見えた。それを確認した香澄は女性の方へ向かうと、軽く挨拶する。
「……ごめん、ちょっと遅くなった? メグ」
「大丈夫よ、香澄。それより早く注文しないと、テーブルが無くなっちゃうよ!」
香澄が“メグ”と呼ぶ女性は、中学校時代からの親友 マーガレット・ローズ。香澄がアメリカへ留学した時に知り合った女性で、今はルームメイトとして一緒に暮らしている。香澄にとってアメリカで出来た初めての友達、かつ心許すことが出来る数少ない親友でもある。
「私はオムライスにするけど……あなたはどうする?」
「そうね、きのことクリームのパスタにするわ」
「えぇ!? この間もパスタ食べたばかりじゃない? あなたって本当にパスタ好きよね……」
「……かもね」
そんな世間話をしながら、彼女たちは空いているテーブルを探し、席に座る。そしてお互いが食事を楽しみながら、他愛もない話を楽しむ。
「うちの学食って安いから、食費も大分助かるわ! ……外で同じ料理注文すると、これの倍近くするのよね!」
「そうよね。ところでメグ……私がこの間お願いした例の件って、どうなった?」
「……心配しないで、香澄! もちろんOKよ! なんとかチケット確保出来たわよ。感謝しなさいよ」
「えぇ、ありがとう。感謝しているわ、メグ」
彼女のお願いとは、今アメリカで活躍している人気グループのコンサートチケットのこと。香澄は“一度見てみたいわ”と思い、劇場でアルバイトしているマーガレットへお願いする。とても人気があるグループなので、最初は駄目もとでお願いした香澄。だがマーガレットから“チケットを確保できたわ”と聞いて、彼女の心の中はどこか高揚している。
「私コンサートって初めてなんだけど、どんな格好していけばいいのかしら?」
「どんな格好って……いつもの服装で大丈夫よ? 別に面接に行くわけじゃないから、スーツを着る必要はないわよ? あっ、もしかして劇場で働きたいとか?」
「そんなわけないでしょう!? ……いつも通りの服装ね、分かったわ」
そんな他愛のない話を楽しんでいると、2人は午後の予定について話を切り替える。
「午後から劇場でアルバイトだけど、あなたはどうするの?」
「私は午後も講義があるから、お昼食べたらお別れね」
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