3章 心に傷を負った少年

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 2階の西側の一部屋を案内したフローラがドアを開けると、そこには勉強机やベッドなどが並んでいた。一方でケビンがマーガレットに案内した部屋も同様で、香澄の部屋と同じく、勉強机や洋服ダンスなどが備えられている。 「……どうかしら、香澄? 少し狭くないかしら?」 「いえ、私が使っていたお部屋よりもむしろ広いくらいです」 それを聞いて安心したフローラは、“一息入れたら1階に来てね”とだけ言い残し、部屋を後にする。  軽い疲労感を覚えた香澄は、目の前に敷かれていたベッドに飛び込む。つい先ほどまで外で干していたのか、シーツからはお日様の優しく暖かい香りがした……そんな感傷に浸っていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。“どうぞ”と香澄が言うと、マーガレットが彼女の様子を見に来た様子。 「……どう、香澄? 新たな新居のご感想は!?」 「十分すぎる間取りね。……さっきフローラにも、同じ質問をされたばかりよ」 ため息をもらしながらつぶやく香澄の隣に座り、今後の流れについて再確認した。 「今後の流れだけど……あなたも含めて、私も特別なことはしなくていいんだよね? あくまでも普通の男の子として接すれば……いいのよね?」 「えぇ、フローラもそう言っていたわ。確か名前は……トーマスだったかしら? “少し浮き沈みがあるけど、基本的に大人しい子”って言っていたから、たぶん大丈夫よ」 などと2人は冗談まがいに話を進めていく。そして一段落ついたところで部屋を出て、ハリソン夫妻が待つ1階のリビングへ向かう。
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