4章 香澄たちの決心とトーマスの挑戦【香澄編(1)】

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ワシントン州 ワシントン大学 2012年6月9日 午後6時30分  一通りの話を終えた香澄たちは、フローラへ別れの挨拶を済ませて部屋を出る。だが彼女も今日はこれで仕事が終わりということで、一足際に大学構内の駐車場で待っている香澄たち。 「フローラさんが快くOKしてくれて良かったわね。……ジェニー、本当にありがとう」 「叔母さんみたいなこと言うんだから! ……あっ、そういえば香澄」  マーガレットは何やら話しておきたいことがあるようだが、それは彼女のおしゃれに関する内容。“スタイルも顔立ちも良いのに、どうしておしゃれを楽しまないの?”という質問。  それに対し香澄は、“自分なりにコスメ品集めをしている”と言って、自分が普段から愛用している、フルーツの香りがするハンドクリームを2人へ見せる。それを手の平で伸ばしながらつけるマーガレット。 「……いい香りね。柑橘(かんきつ)系の香りみたいだけど」 「グレープフルーツよ、メグ。私、この香り好きなのよ」 「へぇ、そうなんだ。……でも良かったわ、あなたなりにおしゃれを楽しんでいるようで」  香澄のおしゃれについて確認したマーガレットは、“彼女なりにおしゃれを堪能している”と聞いて、心の中でどこか安心する。それと同時に、“自分が普段から愛用している、化粧品を貸す必要もないわね”と1人ほくそ笑む。
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