少女と少年

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 曇りのち雨。  今日は、少女は天気予報を見なかった。見なくてもわかる、どうせ雨だ。  ほんのわずかな希望にすがり、あえて濡れる面積が増えるデメリットを選んで、持ち運びに優秀な折り畳み傘を手に取った。決して、少年の真似ではない。  狭いし濡れるから嫌いだと散々文句を言っていた過去の自分を黙殺し、少女は家を出た。  天は少女を嘲笑って見ていたようだ。希望は踏みにじられた。  学校に着くのとほとんど同時に絹糸のようにか細く降りだした雨に、やっぱり普通の傘を持ってくればよかった、と後悔が滲む。  はやくてんきになあれ。  想い人が、あの折り畳み傘を使わなくてもいいように。  てるてる坊主に無視される少女の願いは、天にも届かない。雨は勢いを増して降りやまず、グラウンドを冷たく打ち鳴らす。  小さい傘で帰る気にもなれず、少女は呆然と泣き続ける空模様を眺めていた。その隣を何人もの生徒が通り過ぎ、カラフルに彩られながら帰って行く。  諦めて、使い慣れない折り畳み傘を通学カバンから発掘しようとしたときだった。  ーー目の前に、爽やかな青空が広がった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加