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歩きながら考える。俺は誰なのか。今着ているこの服。これは間違いなく俺のものだ。それだけは分かる。ポケットに手を突っ込んでみるが、携帯も財布もなにもない。つまり情報を手に入れたくてもできないということ。加えて、長いこと歩いているが景色は全く変わらない。後先みても永遠に白い空間が続いている。
急に不安が襲ってきた。
ずっと1人、自分が誰だか分からないまま彷徨い続けなければいけないのかという不安。
まだ、男はいるのだろうか。会えるだろうか。
あの男はこの空間に対して、冷静だった。ということは出口も知っているのではないか。
「急いで戻ろう!」
「戻らなくていいよ~」
「うわぁ!あ、あんたいつから」
「そこまで驚かれると楽しくなっちゃうね。で、僕になにか用はある?
ないならこのまま立ち去っちゃうけど」
やっぱりこの男は飄々として苦手だ。だがここからでるには、こいつから情報を聞き出すしかない。
「さ、さっき言っていたゲームをやってみたいんだけど」
男は気味の悪い笑みを浮かべた。
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