第七話

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「これなら見渡せるだろ?」 「…優紀?」 「行こう」 何故ここに俺がいるのか分かっていないような不思議そうな顔をしていた。 俺だってなんでいるのか分からない。 でも理由なんていい、奇跡のような確率で会えたから… 飛鳥と共に歩き子供の親を探す。 案内係に託す事は簡単だが、こっちの方が早く見つかるような気がした。 少し歩くと飛鳥が俺より身長高いからと交換して肩車をしていた。 子供はぐすぐすと泣きながら一生懸命探す。 俺達も子供を探す親を探す。 「りんちゃん!」 「あっ!ママぁっ!」 若い母親の声が聞こえて飛鳥が子供を下ろすと母親と抱き合った。 母親は俺達にお辞儀して今度ははぐれないように手を繋ぎ歩いていった。 俺は二人が見えなくなるまで手を振っていた。 見つかって良かったとホッとしたのもつかの間、飛鳥に手を掴まれて引っ張られた。 祭で賑わう場所を抜け、少し離れた木陰に身体を押し付けられた。 首筋に顔を埋められてこんなところで…と顔を赤くする。 「お、おい飛鳥…」 「はぁ、優紀だ」 「当たり前だろ、匂い嗅ぐなよ…今日バイトで汗臭い…」 「あ?何だよ、俺に会いたくなかったのか?」 そんなわけない、ずっと会いたかったに決まってる。 飛鳥の背中に腕を回して抱きしめる。 耳元で飛鳥が笑った気がした。 するっと腰を撫でられる。 …こんな事をして誰かにバレたりしないだろうかとひやひやする。
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