第四話

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「いひゃいっ!!」 振り返る前に背後から頬をつねられて驚いて机に写真をばらまいてしまう。 痛くはないが、いきなり触られたからびっくりした。 いつも気配を消して背後に立つなって言ってるのに…飛鳥は忍者か? 飛鳥の腕を掴むとすぐに手を離されて、後ろを振り向く。 驚く俺をジッと見つめている飛鳥がそこにいた。 怒っているのかいないのか、その無表情からは何も分からない。 変な声出ちゃったじゃねぇかと文句を言いたくなったが、ばらまかれた写真を一枚取られる。 あ、それは俺の一押しの写真…丁重に扱えよ。 撮っているのは全て紫乃だけど、服装が違うと雰囲気も変わる。 本格的にモデルになれそうなほど可愛いけど、本人は趣味でいいと言っていた。 モデルよりアイドルの方が紫乃はなりたいみたいだ。 アイドルに居ても可笑しくないけど、俺は写真映えするからモデルの方がいいと思うけどな。 微妙な顔をして飛鳥は俺と写真を交互に見る。 何だよ、言いたい事があるならはっきり言え。 「これ、上条だよな…なんでゴスロリ?」 「リクエストがあったから撮ったんだよ、丁度衣装が演劇部にあったから」 嘘なんて一つも付いていないし、別にやましい事はない。 始にはちょっと知られたくないから、内緒にしちゃうけど… 上条紫乃、俺の友人の一人でもう一人の友人の久我始の恋人。 我が男子校の姫と言ってもいいほど美少女顔だ。 だからか女に飢えた男達の中でも紫乃には変態なファンが多い。 紫乃自身もそれを分かっているから、俺の写真撮影に女装で参加してくれたりする。 しかし紫乃を可愛いだけだと侮ってはいけない。 バスケ部のエースでバリバリの体育会系で身長は始の方が高いが力は紫乃の方が体力は上だ、文系の始が勝てるわけがない。 未だにどっちが上か争ってるようだが前みたいな喧嘩はなく俺達にはただじゃれあってるように見えていてほっといてる。 二人が恋人同士なのは誰がどう見ても学校の奴なら分かる。 だから紫乃のファンは変態が多くても、直接紫乃になにかするような人間はいない。 俺が撮った写真で満足してくれる良心的なファンが多い。 紫乃には報酬をちゃんとあげてるし本人はプチバイト感覚だからお互いに損はない。 しかし始は紫乃の写真が変態共の元に渡るのが許せないらしくいつも見つけては俺の写真を奪う。 恋人の写真を売られたら怒る気持ちも分かるけどな。
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