第五話

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クラスメイト全員把握していないから誰だか分からない。 笑いを一旦止めて俺に一枚の写真を見せた。 風呂上がりでリビングにくつろいでいる俺がいた。 確かあの時、優紀に「ちゃんと拭かないと風邪引くぞ?」と言われて肩に掛けてたタオルで少々乱暴に髪を拭かれたな。 ちょうどその場面を写真におさめられていた。 「まさか大人気アイドル緋色がこんな平凡な学校に転校してくるなんて…しかも男とイチャついている」 「…あー脅しか?週刊誌に売りに行くか?どうぞご勝手に」 「あれ?もっと取り乱すかと思ってた」 「当たり前だろ?だってそれは緋色じゃない、河原飛鳥の写真だ…週刊誌が似てるだけのただの一般人に食い付くか?それにもし食い付いても俺が考えなしの間抜けだと思うか?」 俺が何故盗撮犯に撮られてると分かった上で素顔を晒したと思うんだ? 優紀を撮るのを止めさせる事が第一だが俺だって考えなしではない。 STAR RAINは後ろ楯が分厚いから今までスキャンダルとか一切なかったんだ。 俺と圭介はスキャンダル自体ないが幸人はいろいろとグレー時々真っ黒な事をしていても世間は何も知らず弟にしたい芸能人一位に幸人を指名する。 使った事はないが利用できるなら利用するに限るだろ? 男は突然クスクスと笑い出した。 「ははっ、確かに君の事務所は怖そうだし…面倒な事は嫌いだ」 「じゃあ俺に何の用だよ」 「……君には事務所があるけど三条優紀には何もない」 チッと舌打ちして男を睨んだところをシャッターを切られた。 無断で写真撮ってんじゃねぇと言いたいが早く用件を終わらせたくて黙る。 なんだコイツ、言葉の一つ一つが人を小馬鹿にしている言い方をする。 気のせいならいいが、半笑いの腹立つ顔をしているから気のせいではないだろう。 優紀が目的ならなんだ?まさか優紀に変な写真を撮らせろとかいうなら今すぐそのカメラのレンズを壊す。 しかし男の言葉は俺が思ってる内容ではなかった。 「俺、三条優紀に興味ないから小遣い稼ぎでしか価値はないんだよ」 「…価値?なんでテメェが価値を語るんだ?」 さっきとは比べ物にならないほどの怒りを感じた。 俺はただステージに立つだけのからくり人形だった。
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