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優紀は「頑張れ頑張れ」と俺の肩を揉んでいた。
笑顔の優紀が眩しく見えた、なんだそれ誘ってんのか?
そんなわけない事は分かっているが優紀を見ると今すぐ押し倒していじめたくなる。
優紀は俺の背中を押して行かせようとする、何だよ…お前は寂しくないのか?
俺は少し優紀の前に出て足を止めた。
とっさに優紀は足を止めたが鼻先がくっつくほど、息が掛かるほど至近距離で見つめ合う。
もう少しだったのにと残念に思う。
だからちょっとからかって見たかった、ただ優紀の反応を見たかっただけだ。
この前ドラマ撮影は終わったし、ライブはサマフェスまでなかった筈だが…サマフェスの打ち合わせの追加かなにかか?
分からずマネージャーの話を聞く。
「…え、あ…はい…でもそれは…………分かりましたすぐ行きます」
電話を切り、ため息を吐いた。
今日は勉強見てやれそうにないな。
空き教室から出て久我が待つところに向かう。
久我に用事が出来た事を伝えると久我は不満そうな顔だったが俺の用事を優先する事を思い出したのか渋々頷いた。
明日はちゃんと見てやると約束して学校を出た。
学校から少し離れたところまで歩くと見慣れた黒い車があった。
マネージャーが迎えにきたみたいで車に近付くと扉が開いた。
「申し訳ありません、急に決まったので」
「…別にいい、でも俺…バスケなんて出来ないぞ」
車に乗り込むと走り出した。
後部座席から流れるように移り変わる景色を眺めていた。
マネージャーは「舞台なのでそれっぽくするだけで大丈夫ですよ」と言った。
……それっぽく?仕事において一番嫌いな事だった。
やるからには完璧がいいに決まっている。
電話の内容は某有名なバスケ漫画の舞台の主役に選ばれたという内容だった。
初めてで主演をもらったドラマを見た監督が是非と言ってきたそうだ。
それなら圭介が適任ではないのか言ったが圭介だと雰囲気が落ち着きすぎてイメージではないそうだ。
その漫画の主人公は元気で明るく活発な性格だと言う。
全部俺に当てはまらない気がするが、緋色のイメージだとそうかもな。
そして本格的なバスケのシーンが多い原作通りに臨場感溢れるバスケのシーンを取り入れるそうだ。
そんなステージで適当になんか出来るわけがない。
そういえば上条はバスケ部だったっけ、バスケ部に入部しようかな…そうすればバスケが上手くなるかもしれない。
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