第五話

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舞台は冬らしいからそれまでの期間で出来るかぎり練習して… 部活に入るなら優紀にも言わなきゃな、いきなりバスケ部とか入ったらビビるだろうし… 「夏はサマーフェスティバルの他にプライベートビーチでモデルの撮影と特番のゲスト出演と後それから…」 「…多忙なのは分かった、今は舞台の打ち合わせに集中させてくれ」 「そうですね、着きましたよ」 高層ビルの前で車が止まり、出る。 夏、優紀と遊べる日は何日くらいあるのか…俺の唯一の癒しはお預けかと憂鬱になりつつ仕事モードでビルの中に入った。 打ち合わせが終わり、マネージャーに車で送ってもらう。 寮近くまで行ったら誰かに目撃される危険があるから離れた駐車場でかつらを被り寮に向かって歩く。 歩いているとスマホが鳴った。 確認するのは寮に帰ってからにしようと急ぐ。 多分まだ優紀は帰って来ていないだろう。 寮の部屋はやはり真っ暗で玄関の電気を付けて自室に向かう。 再びスマホを開き見てみると登録した覚えがない名前がSNSに表示されていた。 このIDは優紀にしか送ってないが優紀ではないのは分かる。 まぁSNSだし、いろんな奴がやってるしこういう事もあるのかもしれない…何故か友達登録していないのに友達の枠にあるのかは謎だが… いや、そんな事より気になった事があった。 それはSNSのメッセージだ。 そいつは「君の恋人の浮気現場☆」と腹が立つ内容でその下に写真があった。 それは何処かで優紀と…なんか見た事あるような…忘れたけど男が机に向かってなにかしている。 いやいや、どう見ても参考書が端に見えるし勉強教えてるだけじゃないか? 優紀は頭いいみたいだし、上条達みたいに頼まれただけだろ。 俺は自分に自信があった、それに優紀はそんな事出来る男だとは思えない…とても恋に一途なのは俺だけが知っている。 それだけだとハッと鼻で笑うだけだが、問題は二枚目以降の写真だ。 本棚が見える、ここは図書室なのか高いところに本を返そうとする優紀の上からのアングル。 今日は暑かったのかネクタイを緩めた胸元が開いていて男にしては色が薄いピンクの… 三枚目はかなりの至近距離で撮られていて、いや置いていたのか優紀が背伸びしてシャツから薄いけどちゃんと付いている腹筋… 「アイツ、殺す」 誰かなんて分かっている、あのふざけた男だろう。 何処から俺のSNSを入手したのかは知らない。
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