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「撮らせるかよ」
昨日と同じ場所に行くと先に待っていたのか壁に寄りかかっていた。
俺はまず初めに蹴りを入れた、笑いながらかわされイライラする。
「短気短気~」と煽るアイツの顔面に拳をめり込ませたい。
もう一度殴りかかろうとしたら今度はアイツに壁に押さえつけられた。
睨む俺の耳に唇を寄せた。
正直人生の中で今が一番鳥肌ヤバい。
「この前価値の話をしたよね、俺にとっての価値は河原飛鳥くんにあるんだ…君の写真を素顔のまま自由に撮らせてくれたらもう三条優紀は撮らないよ」
それを聞きハッと笑う。
結局こいつは価値がどうとか言う資格なんてない。
フィルム越しに河原飛鳥ではなく緋色を見ている。
フィルムの向こう側なんてまるで興味がないのだろう……あったとしてもすぐに追い払うが…
俺なんて…STAR RAINがあっても緋色にとっては価値があるだろうが河原飛鳥にとっては何の価値もない。
優紀が居てこその今の俺だ、この男が撮りたいのは俺単体ではなく優紀といる俺なんだ。
本人は気付いていないみたいだな。
「それに気付かなきゃ一生いい写真なんて撮れねぇよ」
「…え?」
「本職のカメラマンになったらまた来いよ、仕事で使ってやるよ」
お前は河原飛鳥ではなく、テレビ越しの緋色でも撮ってろよと足蹴りしてその場を後にした。
それにアイツより俺の方が綺麗に優紀を撮れるし、それだけは譲れない。
俺は貴重な時間を無駄に過ごしたなとため息を吐いた。
まさか優紀が寮に帰宅後優紀に襲われるとはこの時誰も思っていなかった。
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