第五話

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「…えっと、なに?」 「だ、だから俺とキスっさせてやるって言ってんだよ」 聞き間違えだったらいいな…はっきり聞こえたけど… そう思ってまた聞いたがやっぱりそうだった…しかもなんか偉そうになってるし… なんでそんなに上から目線なのか毎回不思議に思う。 俺は「無理です」と自分でも驚くほど冷めた声で言った。 そういうお願いは全面的にお断りしております。 ……なんで最近こんなのばかりに会うんだよ。 「何でも聞いてくれるんじゃないのか!?」 「そんなお願いされるなんて普通思わないだろ!」 せいぜい昼飯奢れとかそんなのだと思ってたんだよ。 この学校はそういうのが多いからって普通警戒しないだろ。 物好きなのは飛鳥ぐらいだと思っていたんだからな。 ……まぁ変な盗撮魔がいたけど、あれは特殊だと思っていた。 とにかく俺は飛鳥がいるから無理だし…いなくても無理だ。 キスはやっぱり自分が心から愛しいと思う相手にしかしたくない。 「俺、恋人いるから無理だ」 「こ…恋人?……………俺より顔がいいのか?」 苦い顔をして古城は諦めが悪い事を言っている。 正直に言うとそうだな、でも俺は顔で選んでるわけじゃないからたとえ古城より顔が悪い恋人でも浮気はしない。 「そうだな」と軽く古城をあしらい古城の腕から逃れようとしたら突然抱き締められた。 調子に乗るな、いい加減にしろと古城を睨むと強く肩を捕まれ本棚に押し付けられた。 またこれかと自分の不運を呪う、なんで俺にこんな事するのか本当に理解できない。 でもいつまでも飛鳥に助けてもらうわけにはいかない。 …今度は俺が自分でなんとか切り抜けないと… 「離せ」 「た、試しにキスしてみれば分かる」 「そんなもん試したくねぇよ!退け!」
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