第六話

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そんな事したら余計喋らないだろ、もっと優しくしてやれよ。 飛鳥が見えないように前に立つ、これなら怖くないだろ。 子供に話しかけるように少年と同じ目線になるようにしゃがみ優しく声を掛ける。 バイトで子供相手をする事があるからお手のものだ。 ……相手は高校生だから子供に接する態度がどのくらい効果があるのか分からないけど… 制服を着ている、一度寮に戻らずずっと学校にいたのか? ネクタイの色からして同級生だろう、でも見た事ないから隣のクラスとかか? 「君、寮に帰らないのか?」 「……あ、その…寮じゃ同室者に迷惑かけるから」 「迷惑?でもイヤホンで聞いているんじゃないのか?」 「同室者が……僕の笑い声、気持ち悪いって…」 笑い声ってまさかあの呻き声か?笑っていたのか。 確かにアレがいきなり聞こえたら怖いだろうな。 少年は恥ずかしそうに口を手で覆い隠す、気持ち悪いというよりなにかあったんじゃないかと心配になる。 少年の話によると好きな曲を聞くとにやけて笑ってしまうらしい。 だから同室者に迷惑掛けないようにこんなところで一人で音楽を聞いていたというわけか。 それが紫乃と始が見た幽霊の正体の全てだった。 きっと肖像画が光ったのは少年の手元にある懐中電灯と紫乃達が持っていたスマホの光がたまたま重なっただけだろうな。 …これで、幽霊は解決だ……案外簡単だったな。
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