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恋をしたら変われる?俺も?でも誰とすればいいんだ?
そこら辺の適当な女と付き合えばいいのか?分からない。
言い寄ってくる女は沢山いる、でも何も感じない…友人を自称する男もクラスメイトに沢山いる、鬱陶しいと思うが本音なんて言えない。
……俺は一般人ではない、芸能人…テレビのイメージを崩さず気持ち悪い仮面を付けて愛想よく笑う。
でも、それももう疲れてしまった…自分の人生に疑問を抱いたからだ。
「辞めたい?」
「…うん」
事務所の社長室に入り机に向かい仕事をしていた父にそう告げる。
俺に芸能人を辞める度胸なんてない、芸能人を辞めたら居場所がなくなるから…
姉のように芸能人を辞めても帰る家があるわけではない。
家でも仕事でも良い子の仮面を付けなくてはならないなら一つだけ、素になれる場所がほしい。
俺が逃げれる、誰にも干渉されない場所、それは学校だった。
もう高二だし、馴染めるか分からないが俺を知らない奴らが沢山いる場所がいい。
とはいえ、有名になりすぎてしまったから変装して名前も本名を名乗れば誰も俺だと気付かない。
赤ん坊の頃からずっと芸能人の時は緋色と名乗っていた。
それは芸能関係者である河原一族全員偽名を使っているから…
別に本名を名乗って不都合があるわけではない、ただ暗黙の了解だ。
だから緋色が河原飛鳥だと誰も思わないだろう、公表している両親の名も偽名だから…
勿論それはテレビに出た時のみで学校関係者や役所なんかは当たり前だが本名を知っている。
ただ一般人は誰も知らない、偽名なのは知っているが…
「本当に辞めるのか」
「うん、それで新しい学校なんだけど…ここに行きたいんだ」
俺は父の机の上に学校のパンフレットを広げた。
今の学校より偏差値は低いし、男子校で花に欠けるが…一番魅力を惹かれたものがあった。
それは寮がある事だった。
家はどうやってもあの家族の中休めないと思っていたから息苦しい家から出れる、とても嬉しかった。
父は今の芸能人が多く通う学校ではなく、一般人だらけの学校に不安らしい…それに寮だから自分の目に届かないと心配している。
俺はもう決めたんだ、行くよ…何を言われても…
社長室から出て、用は終わったからそのまま事務所を後にした。
帽子にサングラスにマスクと怪しい変装をするがどれか欠けるだけで俺だと分かってしまうから仕方ない。
好奇な目に晒されるがいつもの事だから我慢する。
駅前を歩いているとアップテンポな音楽が聞こえた。
俺のよく知る音楽が響いてきて、下を向いていた顔を上げた。
ビルに設置されている大画面の液晶に写し出されるこの前やった音楽番組の映像が流れていた。
三人組の男達がダンスを踊って歌を歌っている。
人々は足を止め、液晶画面に取り憑かれたように見つめていた。
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