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自販機から水が入ったペットボトルを取り出してトイレに戻る。
別に見ていられなかっただけだ…さっさと渡して帰ろう、そう思っていた。
「ははっ、向こうは遊びでもこっちは本気だったっての!…うっ、くっ…」
「………」
足を止めて、個室をまた覗き込むとそんな声が聞こえた。
自暴自棄になっているような声に混じって、泣いているような声も聞こえる。
女にフラれたのか、もしかしてそれで吐いたとか?
…なんだそれ、馬鹿だなと呆れてため息を吐く。
俺には理解できない、フラれたぐらいで吐くとか…どんだけ心が弱いんだよ。
恋愛をしたいと思っていないから、そんな悩みを抱えているのは馬鹿らしく感じた。
男の前に立つ、まだ泣いてるのか……男なんだからそんな事くらいでメソメソ泣く…
「っ!?」
さっきは背中を向いていて、顔をろくに見ていなかった。
今は正面を向いていて、壁に寄りかかっている。
結構綺麗な顔をしていたんだな、気付かなかった。
その顔なら、いくらでも恋愛出来そうなものなのに…
涙がキラキラ光って触ったら消えそうに思えた。
いろんな芸能人を見てきたが、ここまで惹かれるのはなんでだろう。
男に思うような感想じゃないなと苦笑いしているが、目を逸らせなかった。
さっきはすぐに帰ろうと思ってたのに、何だかほっとけない。
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