第一話

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……え?何これ、これが変装?俺にこれを被れと? 確かに変装とは言ったが、こんなオタクみたいな変装しなきゃならないのか? 秘書によると髪も青い瞳も隠せるから一石二鳥だと無表情のまま熱弁している。 この金髪は緋色としての商売道具だ、染めて傷んだらダメなのは分かってる。 俺の意思はない、使えるものはアイドルとして全力で使う。 でも、カツラなら他になかったのか?髪を隠すだけなら普通の黒髪で良さそうなものだ。 髪に触れると、肌触りが良くて高級品のカツラなのだろうと分かった。 それでも夏とかベタついて蒸れそうだな…とはため息を吐く。 父にはわがままを聞いてもらってるんだ、これ以上わがままを言うわけにはいかない。 かつらを被りマネージャーに鏡を貸してもらい整えてみた。 「どう?俺に見えない?」 「そうですねー、ちょっといじめられる体質の子に見えます」 マジかよ…学校に行ったら堂々とした態度で行こう、それで群れるのが嫌いだから一人でいた方がいい。 一人を好んでいればわざわざ俺に話しかける物好きはいないだろう。 そして寮に一人部屋の空きがないらしく、誰かと同室にならなくてはならないと聞いて絶望した。 俺は一人になれると思ったからあの学校に決めたのに… 特別扱いをしてほしくないから、個室は諦めよう。 でも、家族以外の誰かと共同生活なんてした事がないのに隠し通せるのか。 すぐに正体バレるじゃねーか、どうするんだ…誰と同室になるか俺が決めていいらしく保留にしといた。 三人ほど、一人部屋を使っている生徒がいるらしい。 その中の誰かの部屋に、俺が入るという事になる。 …なるべく他人に無関心な奴を同室にしよう、それがいい。 それ以外は、正直誰でもいい…誰が同室でもなにか変わる事もない。 家より寮の方がマシだから寮を諦めない…あの学校くらいしか良いところはなかった。 流石にプライベートスペースくらいあるだろ、そこでのんびり一人でいるしかない。 24時間休まずずっとカツラをしているのはしんどい。 でも、うっかり見られる場合も考えたら外すのは危険だ。 カツラを外せる場所はなくなったが、それを選んだのは俺だ…仕方ない。 そして気になる事がもう一つあった、これも重要だ。 前の学校では両親が校長に「大切な息子だから特別に扱うように」と言ったらしく、教師達が媚を売り気持ち悪かった。 もしかしたらまたそんな事はないだろうなとマネージャーを見た。 マネージャーはSTAR RAINだけではなく、俺の事を頼まれたりする。 社長である父には逆らえないから、学校関連は代わりにマネージャーがやったりする。 仕事以外のプライベートな嫌な事をやらせるなよ。 もう小さな子供じゃないし、俺は学校では優等生を演じている。 俺の周りでの評価は緋色の評価に繋がるのを分かっている。
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