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そして、自分が自分でなくなるのも分かるから素になりたい。
俺は緋色ではなく、河原飛鳥という人間なんだ。
「また前の学校みたいに両親がなにか言ったりしないよな」
「えっ!?…ま、まさか!ははははっ」
なんか胡散臭いが、まぁもしそうなったら校長に直接やめてくれと言うつもりだからどちらでも良い。
秘書にも言うと「言っておきます」と曖昧な返事をされた。
絶対にさせないと言わないところが父の秘書らしいと思った。
そこまで言わないと、俺は普通の高校生活は出来ない。
そして俺は男子校に転校して運命の出会いをした。
三条優紀、それがあの時トイレで出会った少年の名前だった。
同じクラスだったのでさえ驚きなのに、まさか正体までバレるとは思わなかった。
相変わらずエロい唇しやがってと思ったら、正体を見られたとかそんな事どうでも良くなっていた。
俺は変装も何もしていない状態で緋色としてキスをしていた。
姿は緋色だけど、心は何も飾らない河原飛鳥として…
弱っていない普通の状態でキスをしたのに、何故か受け入れられた。
自分で言うのも可笑しいが、大丈夫か?襲われそうで心配だ。
襲った俺が言うのも変な話だけど…
バレたから転校も考えなきゃいけないな、面倒だ。
でも弱味だとは思われたくなくて強気でバレた事は大した事じゃないと言うとまさかの言葉が返ってきた。
日本でSTAR RAINを知らない奴がいるとは思わなかった、俺の金髪…かなり目立つと思うけど…
知らない奴が居たとしても、赤子くらいだろ…誰もが一度くらい見た事があるだろと自分でも思うほどの有名人だと思っていた。
自惚れではなく、それは事実だ。
コイツの友達は知っていたのに、三条自身は全くアイドルに興味がなさそうだ。
俺が緋色だって擦り寄る周りの人間とは違う。
こういう奴を求めていたんだ、トイレで会ったあの時から…
ますます興味が惹かれた、コイツなら同室者でも素が出せる。
でも変だな、なんでこんなに胸が痛くなるんだ?
こんな気持ち、俺は知らない…何も知らない筈だ。
その胸の苦しみが恋だと気付くのはもう少し後の話。
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