第一話

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※三条優紀視点 「河原?」 「…ん、んー…」 長い前髪の隙間から、整った綺麗な顔が覗いていた。 俺の声に反応したのか河原は唸っているが起きる気配がない。 なんで河原がここに?もしかして河原は俺の同室者? 転校生なら、寮部屋の空きがないのは頷ける。 とりあえず起こそうと肩を揺する。 起きる気配がなく、どうしようと考えていたらグイッと肩を掴んでいた手を引っ張られて、バランスを崩し河原に覆い被さる体勢になった。 いきなりの事に受け身が出来ず、河原に体重を乗せてしまった。 起き上がろうとしたら後頭部を掴まれそのままキスをされた。 抵抗する隙もなくて、固まった。 口の中が甘い味で広がる。 昔食べた事があるその味は、懐かしい気持ちにさせた。 これは飴か? お互いの舌で飴を転がし合い甘い飴を分ける。 なんだこれ、腰が痺れてゾクゾクする。 変な成分なんてないただの飴だと思うのに、下半身が熱い。 飴が小さくなり、消えたら唇がようやく解放された。 息を荒げる俺に河原はニヤッと笑う。 キス慣れしてないから、余裕そうな河原がムカついた。 …河原は経験豊富でこんなキス、何ともないんだろうな。 「何だよ、また抜いてほしいのか?」 「ちげーよ!お前こそ誰でもこんな事すんのかよ!」 「………はぁ?」 楽しそうだった河原は一気に不機嫌な顔になった。 …俺、なんか変な事言ったか? だって河原は目を閉じて寝てたし、姿は見えなかった筈だ。 声も掛けたが、一言呟いたくらいでは俺だって分からないだろう。 元々同室者が俺だって知ってたのか? 管理人に聞けば一発だけど、俺も今さっき聞かされたし引っ越しで慌ただしくて聞いてないと思ったんだけど… 突然キスをするから誰でもそうなのかと思った。 勘違いで悪い事したなと河原に謝ると「別に気にしてない」と言っていた。 さっきは不機嫌だったのに、本当か? 河原がいいなら、俺ももう言わないよ。 河原は制服のままで寝ていたから皺になってしまった黒いブレザーを脱ぎネクタイを緩める。
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