第一話

49/56

7052人が本棚に入れています
本棚に追加
/805ページ
仕事、それって芸能人のか? 何の芸能人か分からないが大変そうだな。 俺みたいに趣味でバイトしてるわけじゃないのは見ていて分かる。 あまり詮索されたくはないだろう。 お互い仕事をしてるから、部屋で顔を合わせる事は少ないのかもしれない。 なら今のうちに河原に寮案内した方がいいよな、校内案内は断られてしまったけど… 壁に掛けてある時計を見ると夕飯時にはちょうどいい。 少し歩いて運動してから食べた方が、より美味しいだろう。 河原も欠伸はしてるがもう寝る気はなかった。 「河原、もし良かったら寮案内しようか?」 「…何だよいきなりしおらしくなって」 「お前が上から目線とか言ったんだろ」 もう忘れたのか「そうだっけ」とすっとぼける。 ちょっとあの時傷付いたんだぞ、上から目線とか言われた事なかったし… 自分でも気付かないうちにやってたのかと思って反省してたのに。 河原はズボンのポケットにスマホを入れてリビングを出た。 リビングから玄関に向かう河原を見て河原はこちらを向いた。 「早く来いよ、案内してくれんじゃねーのか?」と言われ部屋を出る河原に慌てて付いて行く。 さっきの言葉は案内してもいいのかいまいち分からない。 素直に言えばいいのにな。 部屋を出て、まず近くにある施設から河原に紹介する。 「ここが大浴場でここが娯楽室」 「かつらのままで入れないから大浴場に来る事ねぇな」 「そうなのか?結構広いぞ…他人と一緒に風呂に入るからよく裸見られるのがちょっと嫌だけどな」 「………」 河原は微妙な顔をして俺を見る。 そりゃあ男が男の裸見てなにが楽しいんだって思うよ、しかしここは特殊だからな。 女の子がいないと、顔がいい男に行くんじゃないか?俺は理解出来ないけど… 河原もいずれ分かるだろうな…男同士のカップルが意外とこの学校に多いって事が… 誰でもキスする無節操な河原くんにはあまり関係ないかもなとトゲのある事を考える。 そう思うと俺より早めに馴染めそうだな。 河原は大浴場を睨んでいた。 そんな険しい顔してどうしたんだ?大浴場に入ろうとしている奴らがビビって引き返してるだろ。 「お前は大浴場禁止な」 「は?なんでだよ、別に禁止されるような事してねぇだろ」 「うるせぇな、もし行ったらお前を素っ裸の状態で外に出して鍵を掛ける」
/805ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7052人が本棚に入れています
本棚に追加