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そして男子校だ、つまり東西南北何処を見ても男しかいない。
だからか多くはないが同性カップルはそれなりに居て、一年も居れば俺だって慣れてくる…友人達がそうだし偏見はない。
恋愛は自由だし…誰と付き合おうが本人達がいいなら外部が口出す事ではない。
そこで半年前に別れた彼女の事を思い出してため息を吐いた。
今の俺がいるのはある意味彼女のおかげだろう。
彼女の事を思い出し辛い思いをしたくなくて始めたバイトが楽しくて、給料を貰う喜びを感じて今の金に執着する性格になった。
後悔はしていない、もう彼女に未練はないから…
「ったく、写真を売りたいなら自分のを売りゃあいいだろ…マイナーなファンがいるくせに」
「は?俺は可愛くねぇから売れねぇよ、こういうのは美少女顔の方がノーマルな野郎共に受けるんだよ」
「いや、案外お前だってノンケの奴に…」
「はーじーめー、そろそろ先生来ちゃうから席に戻ろう」
至近距離で始がジロジロ見てきたと思ったら、可愛く甘えて首を傾げた紫乃に引っ張られて席に戻った。
周りから見たら始が紫乃を独占したくて仕方ない感じだろうが、実際は紫乃の方が嫉妬深い。
そして始は紫乃を見た目で判断して勘違いしている。
俺にとって紫乃は天使だが始にとっては分からない。
なんせ始は紫乃を抱こうとしてるみたいだが、紫乃は始の尻を狙っている。
小柄で華奢な紫乃だが見た目で騙されたらいけない、ああ見えてバスケ部のキャプテンだぞ。
始が襲われたらまず勝てないだろうな、始はヘタレだし…紫乃の頼みなら何でも聞きそう。
そんな二人はまだそういう経験をしてない事は聞かなくても分かる。
何度か紫乃に相談されて知ってはいるが紫乃自身がなかなか踏み込まないし、始が紫乃をお姫様扱いしている今はそういう事をしないのかもしれない。
俺はしばらく恋愛はいいや、今はバイトと金の事だけを考えようと再び視線を下に向けてパラパラと雑誌を捲る。
ライブ会場のイベントスタッフか、アイドルとか全く知らないけど面白そうだな。
教室のドアが開いてくたびれた中年教師が入ってきた。
俺は話を聞かず雑誌に夢中だったが、教師のわざとらしい咳払いで現実に引き戻された。
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