7095人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな二人はまだそういう経験をしてない事は聞かなくても分かる。
何度か紫乃に相談されて知ってはいるが紫乃自身がなかなか踏み込まないし、始が紫乃をお姫様扱いしている今はそういう事をしないのかもしれない。
俺はしばらく恋愛はいいや、今はバイトと金の事だけを考えようと再び視線を下に向けてパラパラと雑誌を捲る。
ライブ会場のイベントスタッフか、アイドルとか全く知らないけど面白そうだな。
教室のドアが開いてくたびれた中年教師が入ってきた。
俺は話を聞かず雑誌に夢中だったが、教師のわざとらしい咳払いで現実に引き戻された。
「えー、今日は転校生を紹介したいと思います」
教師の声に周りが期待と興奮でざわざわと話し出した。
この学園は外部入学生も珍しいのに転校生なんてもっと珍しい。
俺の時もそれなりに注目を集めて友達も多く出来た。
それが今は紫乃と始だけ、他の奴は俺に彼女が出来てから離れていった…意味が分からない。
始の話によると「下心と非リア充ばっかだったんじゃねーの?」という話だ、よく分からなかったが頷いておいた。
教室のドアが開き足音が聞こえると話すのを止めて皆そちらに集中する。
さっきのような騒がしさはないが内緒話のように小さくぽつぽつと話している声が聞こえた。
「え?根暗?」
「前髪長っ!」
期待していたような顔じゃなかったのか不満で溢れている。
うるさいな、この学園は顔が命なのかよ…そういう不満は自分の鏡を見てから言えよ。
なんでここの奴らは、人の容姿を基準にしてるんだよ。
相手が誰だっていいだろうに、こういう陰口は気に入らない。
最初のコメントを投稿しよう!