夕暮れに蜂蜜を垂らす係にも分厚い焼きたてホットケーキを

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 終業式の後、私は昼前に学校が終わったにも関わらず、直ぐ帰宅することが出来なかった。感情も無ければ、目的も、理由も無い。けれども、何故か家に帰れなかった。空腹も感じなかった。気が付けば、私はあの公園に辿り着いていた。時刻は14時。こんな時でさえ、私は「あと3時間は居られる」と思った。あの時と同じベンチに座って、同じように俯く。目を閉じても眠れる訳では無く、ただひたすらに座っていた。  どの位そうしていたのだろうか、ガチャガチャとした騒がしさが近づいてきて、塊のまま公園に飛び込んできた。あの日の少年たちだった。自転車を水飲み場の傍に乗り捨て、一目散にブランコへと向かう。よく判らないジョークを言い合いながら、楽し気に遊ぶ彼らは、実に幸せそうだった。    ああ、私は、私だけは、永遠に “そちら”へ行けない。  突如として湧き上がった考えが、私を殺してゆく。手足の感覚が消え、自分がまるで宇宙に漂っている塵みたいに思えた。何も無い。楽しくない。人じゃない。生きていない。  私には、何も無いのだ。雨も、虹も、太陽も、私の眼には映らない。 「なあ、もし神様とか、妖怪とかになれるならさあ」  孤独の深遠で溺れそうな私の耳に、そんな言葉が流れ込む。あの少年の声だった。 「おまえらは、何にでもなれるなら、何になりたい?」  私はゆっくりと顔を上げた。少年たちは私に背を向けたまま、彼の問いかけに答えてゆく。 「うーん、オレはさ、風!風になる!」 「あれだ、ピラーッつってパンツ見るんだろ」 「ハハハ!」 「ぼくはおやつの神様かなあー、どんだけ食べてもだいじょぶそうじゃん」  各々が、嬉しそうに夢みたいなことを話している。身振り手振りで、この話題が盛り上がっていることが伝わってきた。実に幸せそうで、私より遥か遠くに感じた。
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