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「――そんなわけで、私の体験談です。やー、話してみると全然リアリティーないねぇ」
「いや、そーいう問題じゃないから」
「あっはっは」
なかなか衝撃の体験談を披露してくれた相手は、思わず突っ込んだ私にほけほけ笑った。相変わらずのマイペースっぷりだ。いい意味で学生時代から全く変わってなくて安心した。
「それにしてもすごいね、なかなか見れるもんじゃないよ。ホントにヌシとかだったかも……あ、もしかしてなんか恩返しあった!?」
「さあ? 大雨が降ったおかげで、地元の田んぼとかため池は大助かりだったみたいだけど。個人的には特になかったなぁ」
「ええ~~~」
あっさりとファンタジーな期待を裏切られ、思わず不満の声が出る。
相手はそんな私にまた笑うと、先に立ってカフェを出た。6月の午後の町並みは、いつの間にかにわか雨に包まれている。……困ったな、今日に限ってカサがない。
「――ああ、大丈夫だよ。すぐ止むから」
「はい?」
なんてことない口調で彼女が言った直後、本当に雨が止んだ。しかも見る見るうちに雲が引いて青空がのぞき、うっすら虹までかかったじゃないか!
「特別なお返しはなかったんだけどさ。今みたいに雨で困ったときとか、逆に晴れすぎて辛いってとき、ちょうどイイ感じに止んだり雲が出てきたりするんよね」
ちなみにこれは彼女に限らず、当時のクラスメイト全員に共通しているらしい。彼らが在学中、行事に悪天候が全く被らなかったことから、『4年3組晴れ属性伝説』が生まれたとか、生まれないとか。
「……それってさ。神様のえこひいき、って言わない?」
「さあ? あ、ちゃんとありがたいなぁとは思っとるよ」
思わず遠い目になった私の一言に、のんびり笑った彼女の器のデカさをつくづく実感するエピソードだった。
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