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「先頭は振り返らないで前に集中」
「……へぇい」
そうしながらアズサも雑談に加わる。
「にしても、言い方と例えがちょっと大人げないんじゃないのクオレ」
そうやって、背後を付いてくるクオレに意見を求めたけれど。
クオレから返答は無かった。
私はそっと、背後を振り返ってみる。
まだ、遠く後ろに外界の光が窺えた。
下へ微かに傾いた闇への入り口は、真っ直ぐに百メートルほど続いているだろうか。足下には先程の雨が小さな川となっていて静かな水音を立て流れている。
ジメジメとした洞窟には苔が広がり、わずかな光に露がきらめく。水が、比較的流れ続ける洞窟なのかもしれない。じめじめとしてはいるが不潔な感じは無くて空気もどこか澄んでいる。
それでも洞窟の、人の足が入る事を拒否している道は足場が悪いし雨と苔で滑りやすい。
「ところで、ディザー?その、ディザーっていうのは」
私は足元を見る為にすぐ前に顔を戻す。
アズサの問いかけに先頭を行くディザーは振り返る事なく応答していた。
「ああ、俺の名前の事か?」
「あら、やっぱり気にしてる事?」
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