1章 D Dream of Tail -2- 『雨を降らせる龍と集い』

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1章 D Dream of Tail -2- 『雨を降らせる龍と集い』

 雨は、激しく川となって道を流れていく。 「ひでぇなぁ!」  言葉とは裏腹に、大雨にはしゃぐ声に私は少し笑っていた。  彼の明るい声に不安が、ちょっとだけ吹き飛んだんだ。  大きな岩が出っ張って、丁度雨宿りできる様な空間に走り込みながらその青年は更に雨空に向けて喚いている。 「最悪だな!最初っからこうだとやる気も失せてくるぜ!」  青白い閃光が青年の言葉を批判するみたいにひらめいた。遅れて届く轟音。  先にこの岩影を見つけて雨宿りをしていた私は、その衝撃に思わず肩を震わせてしまっていた。  雨に、慣れていない。  私の住んでいた所は何時も大地が乾いていた。稀に雨が来る時はこうやって、偉大なる天神が使いを寄越す。  雷は神聖なものだ、神様だと教えられて私は育った。  そしてその神様は確実に存在する脅威とは違い『見えない』ものであるから畏怖すべきものだとも。  乾いた大地に雨が降る時、下る神に向けて……姿を見せてはならない。  遠い大陸の隅に追いやられ、忘れ去られた部族の古い習慣に忠実に……縛られ。  私は、雷がちょっとだけ苦手と心得ている。     
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