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第一章 手に入れたのは金か、住み家か
街の外れにある古ぼけた洋館。その四階に身を潜め、窓越しから恐る恐る外の様子を伺う二人の男。男の名は、達也と良平といった。
昨日、ネカフェで知り合ったばかりの二人は、お互いにそれ以上の事は知らない。
「達也、見ろよ」良平が窓の外を指さした。
「ラッキー、ポリの奴ら、早々に退散か」
「でも、おかしかないかい。この洋館に俺らが逃げ込んだ事は分かっている。なのに、何故、奴らは追って来ない」
「もしかして、生きている者には、目に見えない館だとか」
「馬鹿言うなよ、それじゃあ、俺達はもう死んじまったってことじゃないか」
「それとも・・・」
「それともって」
「ここが有名な呪われた館だとか」
「もう、やめろや」
達也の言動に不愉快さを感じたのか、良平が言葉を遮った。それきり、二人は寡黙になった。二人の寡黙を絵で表現したかのように、やがて、外は暗くなり、電気の通じない部屋は真っ暗になった。
「お前、後悔してないか。俺達、犯罪者だぜ」
「おめえが言い出したのだぜ、派遣切りしやがった会社が許せない。なんか復讐したいって。だから、こうやって、身を切る思いで稼いだ俺達の分け前を貰っただけじゃないか」達也は札束の入った鞄を抱きしめていた。
「でも、ここまでやる事はなかった」
「ただで泊まれるこんな部屋があるなら」
「ああ全く皮肉なものだ。金を手にしたとたん、住み家を手に入れた」
二人は、その会話を最後に寝入ってしまった。
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