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第二章 俺たち以外に誰かが・・・
「おかあちゃん。お腹減った」
「何を言っているの、早く寝なさい」
「おい、良平、起きろよ、なんか声がしないか」
達也は、良平の体を揺すったが、良平はピクリともしなかった。
「だって、お腹減って、眠れないもん、僕」
今度はハッキリと聞き取れた。子供の声だ。
時刻を確認すると午前二時を少し回ったとこだった。
「誰だ、誰かいるのか、居たら返事しろ・・・」
「お腹減った」
明るい子供の声が返って来た。
「やれやれ、確か、チョコレートがあったな」
達也がチョコを鞄から取り出して、手に取ると、「ありがと」と言う声が聞こえた。
その声と共にチョコは達也の手から消え去った。
「どうも、すいません。無理言って」
今度は母親らしき女の声がした。
「いえ、お役に立てれば、何よりです」
それきり、母親と子供の声はしなくなった。
「なんだったのだ、今の声は・・・」
「夜逃げした一家よ」
今度は、若い女の声だった。
「夜逃げした一家が、何で此処に居る」
「此処が隠れ家だから、追い詰められた人達の。追い詰められた人達にしか見えない、最後の砦、それが隠れ家。あなたも、此処に来たという事は、何かに追い詰められたからでしょ。例えば、そうね、会社の金庫からお金を盗んだとか・・・」
そうか、警官が此処に入って来なかったのは、そもそも、存在を確認出来なかったせいか。それにしても、この女、なんで俺の事を知っている。
達也は突如現れた女に困惑した。現れたのは、声だけであったが。
そして、達也は声を荒げた。
「お前は、誰なのだ・・・」
またしても、それきり、女の声はしなくなった。
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