雨宿り

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あの雨の日から、すっかりあの少女のことを忘れかけた頃。 その日は、朝から雨だった。 傘にぶつかる雨粒の音がぽつぽつと耳に響く。 僕の後ろから走ってきた人のせいでズボンの裾が濡れる。 「ごめん、濡らしちゃった?」 人のズボンを濡らしておいて、目の前にいるその少女はニヤニヤと笑っている。 「それ、謝る気ないだろ?」 「うん、ほらケーキ食べに行こ!!」 あの雨の日に出会った少女は、今度は僕の傘で雨宿りをしていた。 「傘は?」 「ヒロくんが持ってるからいいかなぁって思って!」 「 はぁ…。ケーキは約束だからいいけど…せめて、名前は教えてくれない?」 「雫だよ!」 相合傘の中、そっと彼女に掴まれた腕が熱を帯びて行く。 雨宿りの中、ゆっくりと恋が始まるなんてまだ僕は知らなかったけど未来が見える彼女は知っていたのかもしれない。 ぽつりぽつりと降る雨。 僕らの肩がぶつかり。 恋も一緒に雨宿りを始める。
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