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穏やかな気持ちのまま、二人で窓の外を飽きずに眺めていると、ふと彼が思い出したかのように呟いた。
「そういえば、初夏に降る雨を翠雨(すいう)って言うんだって」
私は唐突に話す彼を見て、首を傾げる。そして彼が何を言うのか続きを待った。
「翠雨のことを、青葉雨とも呼ぶんだって。綺麗な言葉だよね。それに別名、緑の雨と書いて緑雨(りょくう)とも言う。もしかして今日の雨は葵が降らせたのかもしれないね」
そう言って、目を細めて私を見た。
私は瞳を瞬き、彼の言葉の意味を理解する。それから胸がいっぱいになった。
「今日の雨は、葵の大好きな雨なんだね」
私はどこかで葵が、いつかやっていたように腰へ手を置き自慢げに笑っているんじゃないかと思った。緑色は私のもの。葵があの時言っていた台詞。
自然と私の頬には笑顔が浮かんでいた。
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