慈雨

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そんな風に思うと何故か、隣を歩く幼馴染の横顔やその向こうに広がる景色までもがぼやけてきて、瞳が熱くなった。そしてそれが涙なんだと遅れて分かる。 心にぽっかりと空いていた隙間にやっと気がつく。葵が側にいなくなってずっと寂しくて仕方なかったんだ。身体や胸の奥をぎゅっと掴まれたように痛む理由はこれだったのかと理解すると余計に涙は止まらず、溢れ出てきた。 号泣する私の様子をみて、かなちゃんは繋いだ手をぎゅっとしてくれる。いつのまにか、かなちゃんは葵の死を悲しむだけではなく、人を勇気づけられるほど葵のことを乗り越えたんだね。 止まらない嗚咽を漏らし、涙なのか雨なのかすら区別がつかない程ぐしゃぐしゃの顔になりながらひたすら泣いて、それから私も彼の手を強く握り返した。 家に帰宅すると、両親は私の比じゃないぐらい泣きながら私のことを怒った。だけれど、私のくしゃみを聞くと説教をやめた。それから力いっぱい抱きしめてくれた。
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