翠雨

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翠雨

次の日も、空は晴れることなく雨が降り続いた。 今日は葵の一周忌。 両親は朝早くから慌ただしく準備や挨拶などをしていた。私も先程までは一緒になって動いていたが、「翠は少しゆっくりしておいで」と言われ、親戚が揃う部屋から抜け出し、一人、静かに窓の外を眺めていた。 しとしと、雨の降る様子に心を奪われていると、畳の擦れる音がし誰かがこちらに向かって歩いてきた。隣に立つ人物が何となく誰かは分かったけれど、座り込んだままそちらを見上げる。思った通り、隣にはかなちゃんが立っていて、窓の外に視線をおくっていた。 彼は、僕も葵とは家族のようなもの、とわざわざ手伝いに来てくれていたのだ。幼馴染が来てくれて葵もきっと喜んでいるんじゃないかな。 そのまま見上げていると、かなちゃんも私の方に視線を向ける。その琥珀色の瞳は、凪いだ海のようにただただ静かで、私は吸い込まれるように見つめ返した。 10秒、それとも1分程時が経ったのか分からなくなるくらい彼の瞳だけを見つめていると、かなちゃんの方が視線をそらした。 「今日、晴れなくて残念だったね。」と彼は言う。その言葉を聞いて、私は首を振った。 「かなちゃん違うよ。今日は雨で良かったんだよ、だって雨は葵の好きな天気なんだから」 私が言うと、やっぱり彼は綺麗な顔をいつものように不思議そうにしてから「あぁ、そっか」と納得したように頷いた。 「葵のことは翠が一番わかってるよね。流石、双子だ」 私は葵のことを思い出しながら応える。 「そんなのあたりまえだよ。葵の好きなものならなんだって分かるんだ。私の好きなものは、葵の好きなものなんだから」 私の言いように彼はきょとんとした後、ふっと噴き出す。「そんなに自慢げに言わなくても」と顔をくしゃりとさせ、私の髪をぐしゃぐしゃに撫でた。 笑わせるつもりは無かったのに笑われて、私は少し拗ねる。同い年のかなちゃんにいつまでも子ども扱いされるのは癪だ。確かに、かなちゃんは落ち着いていて私よりも大人っぽいけど。 彼は私の考えていることなんてお見通しみたいな顔をして未だに笑い続けてる。 納得いかない。
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