雨模様の彼女。

8/14
前へ
/47ページ
次へ
「あれっ?こんなところで何やってんの?」  お昼休み。たまには屋上に行くのもいい。  そう思って弁当箱を持って階段を上っているところだった。  踊り場で座り込んでいる悠生を見つけた。 「弁当食ってる」  顔を上げる。  たしかに、パンをほおばっているようだった。 「こんなところで?一人?」 「あー。いつもなら友達が一緒なんだけど。生徒会の仕事があるみたいだから」 「え?友達いたの?」 「何気にひどいよね、あんた」 「そう?」  悪口のつもりはなかったのだけど。  私自身、友達少ないし。 「あー、その、あれからなんかあったか?」 「ん?」  こほん、と軽く咳払いしてから、話を変えた。  最初はなんのことだか分かんなかったけど、嫌がらせのことらしい。 「頻度は増えてるけど、実害はないから全然へーき」 「そうか。それなら良かった」 「心配してくれてたの?」 「俺が原因だから。それを関係ない顔する奴の方がおかしいだろ?」  口は何でもないように言っているが、断固として私の目を見ようとしない。  けっこう照れているらしい。 「そういえば、何個かわかったことがあるの」 「ん」 「犯人さんは女の子で、同じクラ」 「そこにいるのは誰だ!」  私の台詞(セリフ)は、悠生の怒鳴り声によって遮られた。  悠生の誰何(すいか)に反応して陰から出てきたのは、シンプルに髪を二つに結んだ、地味な印象の女の子だった。  同じクラスにこんな子がいたような気がする。  目立つわけでも、よく話すわけでもないから、あまり覚えていない。 「悠生くん……」 「美月(みづき)?」  その女の子は小さく悠生の名前を呼んだ。  悠生は応えるように女の子の名前らしき言葉を呟いた。 「悠生、知り合い?」 「彼女」 「いたの!?知らなかったんだけど」 「秘密にしてたから」  刺々しくこたえたのは話題の女の子だった。  私はどうやら嫌われているみたいだ。  まぁ、彼女の立場からしてみたら私はおもしろくないんだろう。知らなかったとはいえ、悪いことをしてしまったという罪悪感もある。 「なんでここにいるんだ?」 「それはその……」 「……お前か?こいつを嫌がらせしてた人」 「あっ、いや……」 「違うんだよな?」 「……ごめんなさい。悠生くん」  もじもじと定まらない。  少し黙ったあと、小さく、しかし明確にうなずいた。    
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加